プロジェクトストーリー

Works

現場に飛び込み得られた圧倒的な現場理解と
テクノロジーの力で「新」常識を作る

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東京メトロを変えたDXプロジェクト新デバイスでつくる
検査業務の「新」常識

東京で暮らす人、働く人の足として長年社会を支える東京メトロ。その重要な使命は、乗客の安全と安心を守ることです。今回紹介するのは、地下鉄内の土木構造物(トンネル等)の全般検査をサポートする専用アプリ開発プロジェクト。アプリ開発だけでなく、業務の仕組みそのものも変えたDXプロジェクトで、大幅な業務時間の短縮や管理精度の向上が実現されました。

尾形 正則

尾形 正則

New-IT(DX支援・ITサービス)
ディレクター

2011年中途入社(前職:ハードウェアベンダーでのカスタマサポート業務)
アプリケーションの開発PMのほか、業務改善コンサルティングや自治体向けの新規事業開発などを担当

デジタルツールを現場に導入し、検査業務を変える

 

デジタルツールを現場に導入し、検査業務を変える デジタルツールを現場に導入し、検査業務を変える

プロジェクトの概要と当時の社会的背景を教えてください。

東京メトロでは、終電後に毎日トンネル検査を行っています。当時は紙とデジカメを使って実施されていましたが、そこにデジタルツール、具体的にはタブレット端末を導入して、大幅に業務時間・効率性を変えたというのが、今回のプロジェクトの概要です。

背景としては、確か2013年頃だったと記憶していますが、当時、Apple iPad/iPhoneをエンタープライズ向け、つまり大規模ビジネス向けへの展開を考えていたタイミングと合致したということがあります。別プロジェクトを通し、既知の関係にあった当時の当社代表とApple、東京メトロの担当者の3者間で「新デバイスを現場業務改革へ活用できるかもしれない」と可能性を感じたことが、そもそもの始まりでした。

タブレット導入以前は、どのように検査が行われていたのでしょうか?

デジカメで写真撮影しながら、チェック書類に書き込み、その後事務所に戻って報告用の書類を作成するという流れで検査をされてました。検査そのものに加え、前後の工程も非常に大変な作業でしたね。特に報告書はA3サイズで1万枚以上にもなる量で、残業しながら紙出しをされていました。 プロジェクト中に、実際に私もヘルメットをかぶり、何度かトンネル検査の現場に同行させていただきましたが、皆様が非常に疲れているように見えたのを今でも覚えています。そのような皆様の様子を見て、「早く家に帰れるようにしたい」と強く感じましたね。

徹底的にユーザー目線を得るためにトンネルに入り共に課題に向きあったからこそ生まれた最適な解決策

 

プロジェクトを進めるうえで苦労されたことはありますか?

現場で実際にツールを使う方々に、業務の流れを変えず機器を導入する、ではなく、業務の仕組み自体を変える――当時この言葉はなかったのですが、いわゆるDXを行う意義を理解してもらうのは大変でしたね。ただ現場の方々が、新しい機器よりも人の目や、長年人が手で行ってきた作業に信頼を寄せるのは理解できますし、デジタルツールに対する反発の気持ちが生じるのも当然です。ですから、利用者の困りごとや求めているものを理解し体感するために、検査には幾度も同行しました。

 

徹底的にユーザー目線を得るために 徹底的にユーザー目線を得るために

実際に現場に出てみると、色々なことが見えてきます。例えば、「軍手をしているので画面は反応しづらい」「タブレットで撮影すると腰が痛い」などです。現場を身体で知ると同時に、同じ言葉を使いつづけながら検査員の方々と関係を築きあげていきました。時に「その使い方違うよ」なんて指摘されたりしつつ、コミュニケーションを続けていくなか、お客様との距離は縮まってきましたね。同時に管理側が新しいデバイスを入れ効率化を進める意図も伝わるようになり、徐々に生まれてくる現場側と管理側の一体感、そして私たち開発者との一体感はプロジェクト推進の支えにもなりました。

今プロジェクトを振り返ってどのような想いを持ちますか?

お客様を含め多くの方々としっかり協力体制を組めたからこそ、最適な仕組みづくりができたとの思いはあります。例えば軍手でも入力できるようタッチペンを導入したり、Appleにレンズの画角調整をお願いして楽な姿勢で撮影できるようにしたり。現場の課題に応えるべく試行錯誤もありましたが、多方面からサポートを頂いたおかげで成し遂げられたプロジェクトでした。

導入後はiPadで現場を撮影し検査結果もその場で入力。それらデータは全てサーバー上で一括管理されることになり、作業効率は劇的に向上しました。今では現場にiPadを持って入るのが当たり前の風景となりました。プロジェクトが終わった後でも、その光景を日常として目にすると感慨深いですね。あとはプロジェクトに関わった先方担当者が社内表彰を受けたり、海外の技術学会でプレゼンしたという話も聞いて…、それも嬉しかったですね。

今後の可能性と目標「持続可能な社会をつくる」ことに貢献する

 

この仕組み自体は他社でも活用されていると聞きました。

同業他社で、同じ仕組みが取り入れられています。業界全体の課題であった検査業務の負担削減の一助を担えたことは、ちょっとした喜びでもあります。

チェンジは、日本を持続可能な社会にすることを掲げています。私も以前は目の前にある業務改善/改革に必死でしたが、年齢を重ねるにつれ考え方も変わってきました。お客様の課題を解決することはもとより、今までの経験を活かし「持続可能な社会をつくる」ことに少しでも貢献できれば嬉しいですね。