株式会社柿安本店は、明治4年に牛鍋店として創業した老舗企業です。時代のニーズに合わせて事業を拡大し、今では、精肉、惣菜、和菓子、外販、レストランの5つの事業を、全国各地の販売店やレストランを通じて提供しています。「おいしいものをお値打ちに提供する」という経営理念のもと、同社には顧客を第一に考えるという風土が根付いています。精肉、惣菜、和菓子、外販、レストランと多角化する事業内容のなかで、長年にわたり経営の要として支えてきたのは柿安本店の「人財」です。同社では人材を「人財」とし、職人の技やおもてなしの心の育成に力を入れてきました。さまざまな研修プログラムを実施している同社ですが、新入社員研修においては、チェンジのプログラムをご活用いただいています。今回、チェンジの研修プログラムを採用いただいた経緯や、経歴の異なる社員を研修する際に気を付けたことについて、総務人事部の荒田氏と花輪氏にお話を伺いました。
荒田氏
社会や価値観の変遷で、学び方や学ぶ内容をブラッシュアップさせようと考えたからです。これまで新入社員の育成は、集合研修の中で、「マナー」「ロジカルシンキング」「報連相」などをかなりの時間をかけて実施してきました。こういった基本的なことを学んだあとに、理解度の確認テストを実施するため、どうしても時間が必要でした。デジタルが普及し、効率化が重視される時代であるのに、同じ研修方法を続けていくことに課題感をもっている中で出会ったのがチェンジでした。
荒田氏
チェンジを知ったのは、コロナ禍だったと思います。はじめは新入社員研修としてではなく、各階層の社員用としてeラーニングのプログラムをご紹介いただきました。話を聞かせてほしいと連絡をすると、しばらくしてチェンジからサービスの紹介とデモ画面が送られてきました。デモ画面を見ると、なんと柿安オリジナルのeラーニング教材がそこにあったのです。クイズ形式で、柿安の基礎知識を問う問題が作られていました。恐らく、柿安の情報をホームページなどで調べて、作成してくださったのだと思います。こちらは何も知らなかったので、ここまでしてくれるのかと、とても驚きましたね。その後、研修プログラムの検討が一旦保留となったあとも、2か月に1回ほど情報提供くださるなど、熱心にコンタクトをとってくださいました。
コロナ禍が収束し始め、新入社員研修の検討を行うなかで、何社かに話を聞こうとなり、そこでチェンジにも依頼いたしました。 もちろん予算がありますので、価格も重要ではありましたが、担当者とのコミュニケーションやご提案内容など総合的に鑑みて、チェンジのプログラムを採用することに決定しました。
荒田氏
eラーニングに入社前から取り組んでもらい、理解度の差をできるだけ埋められるような工夫をしました。2月に内定者に向けたオリエンテーションがあるのですが、そこでeラーニングのアナウンスを行って、5月までの3か月間受講できるように設定しました。学歴や経歴の差異を入社前にある程度一定にしておくことで、研修中に生じる理解度のギャップを埋めて現場でみんなが活躍できるように仕上げることが目的です。入社前の事前研修として、ビジネスマナー編とロジカルシンキング・コミュニケーション編を学んでもらうことで、入社後に行う研修を予習してもらった状態となります。実際、オリエンテーションで周知したこともあり履修率が非常に高く、研修でも全員がきちんと理解できているように見受けられました。
花輪氏
事前研修として指定した2つのプログラム以外にも、余裕がある人向けにいくつかプログラムを用意していました。そちらについては2~3個受けている人や、一通りざっと観ている人など、受講意識はさまざまです。ですので、プログラムを2つに絞ってアナウンスしたことも効果的だったのだと思います。
荒田氏
その他には、グループワークにも力を入れています。コロナ禍以前の研修からグループワークを重視していましたが、研修方法を変えても継続して残しました。その理由としては、チームで何かを成し遂げるといった協調性や参加意識、リーダーやサポート役といった役割の違いなどを学ばせたいと思っているので、グループワークは長年研修方法を模索する中でも一貫して取り組んでいます。新入社員という立場は同じでも、学歴や年齢、育ってきた環境は異なります。個人が抱いている不安やその感じ方もバラバラです。そうした違いをもちながらも、柿安本店という会社で互いに協力して活躍してもらいたい。そうした願いから、グループワークは継続して取り組むことにしています。
花輪氏
全体的にみんなとても前向きな姿勢で、私が入社したときよりも真面目に研修に取り組んでいるように感じました。中にはまだ学生気分が抜けきらない人もいますが、そこはこちらから積極的にアプローチして、ほとんどの新入社員の歩調を合わせられたと思います。私自身も今年1月に人事部に異動してきたばかりでしたので、勉強になることがたくさんありました。
荒田氏
私は、挨拶ができることが最も大切だと思います。挨拶はコミュニケーションの基本です。コミュニケーションがしっかりとれるようになると、仕事仲間やお客さまと良い関係性が築け、良い仕事につながります。
実は、私が入社した当時は、部門間に大きな隔たりがありました。特定部内の各セクションであっても独立しており、横の連携はほとんどありませんでした。現在は各部門のトップが、部門の壁を取り払おうと尽力してくれています。
花輪氏
以前私が所属していた部署も以前は隔たりを感じるようなこともありましたが、現在は仲間意識が強く、みんなで会社を良くしようと団結しています。その部門のトップは周りを巻き込みながら事を推進するパワーがあり、そこに部下がついていくので、気がつけば部門関係なく一体となっていったのだと思います。
荒田氏
花輪が言うように、営業部の取り組みのおかげで、会社全体もかなり変化しました。そこには、やはりコミュニケーションが必須です。新人教育においては、コミュニケーションのテクニックをあれこれ教えるよりも、コミュニケーションのスタートとなる挨拶を徹底することが、新人教育においては重要となります。なかには、返事をすることも挨拶ですが、私が社員に求める挨拶は自発的に行うものです。自分から発して、相手とやりとりを行う。そしてさらに一言加えることで、コミュニケーションが深まる。そうした、挨拶を軸としたコミュニケーション力を、柿安本店に入社する社員には身につけてもらいたいと思っています。
荒田氏
今後は、「心理的安全性の担保された職場環境づくり」に、引き続き取り組みたいと思っています。弊社が目指す心理的安全性とは、異なる価値観や意見を、誰でも誰に対しても安心して表明できる状態です。例えば、同じ価値観をもった人間が集まれば、話し合いはスムーズに進み、方向性も見つけやすくなります。しかし、それでは議論においてスパークせず、新しい「何か」は生まれづらいように思うのです。異なる価値観や意見が交わることで、新しいアイデアや技術が誘発されるのではないでしょうか。多様な価値観を認め合える環境をつくるには、会社全体での取り組みが必要です。やるべきことの優先順位をつけて、一歩ずつ実現に向けて進みたいと思います。
花輪氏
私は、もともとアルバイトスタッフで、柿安本店という会社が好きで入社しました。そんな大好きな会社ですので、社員である仲間も好きですし、社員にも会社を好きになってもらって、一緒に頑張りたいなという想いがあります。年齢や役職に関係なく、仕事以外でも関われるような場所をつくることで、社員同士の横のつながりができればという想いです。そういった想いもあり、約4年前から社員で野球チームをつくって活動を始めました。現在メンバーは20名ほどいます。心理的安全性の構築は、互いを知ることから始まります。私のこの活動も、「心理的安全性の担保された職場環境づくり」の第一歩になると信じています。