ドコモグループ3社1,231名の新入社員の「人間力」を作る

「組織の中で個人の専門的スキルを活かすには、人間力が必要不可欠」と語るのは、ドコモグループ新入社員研修を企画実施した 3 社の担当者。
個人の専門的スキルが重視される昨今、採用基準も組織風土も異なる 3 社が、「高レベルの専門性をもつ人材になるべく期待された新卒者の自信を、ある意味打ち砕くような研修」を目標とし、そのスキルを十二分に発揮できる土台をつくるべく、2024年4月、ドコモグループでは 1,231 名の新入社員研修を合同で実施しました。

今回は、合同研修を実施した背景や企画時の苦労、新入社員研修を行うにあたり大切にしてきた想いについて、各担当者にお話を伺いました。

 

ドコモグループの事業概要を教えてください。

一刈氏

ドコモグループでは、「あなたと世界を変えていく」をコンセプトに、スマートライフの実現に向けた通信・サービス・システム開発事業を行っています。グループの英知を結集し、世界中のお客さまの生活を豊かにすることが当社の目指すところです。

グループの目線を合わせる

3社合同で新入社員研修を実施することになったのは、どういった背景がありますか?

一刈氏

実は2023年度からドコモとコミュニケーションズは既に合同で研修を実施していました。そこでコムウェアも一緒にという話はあったのですが、コムウェアと他2社の事業領域が異なることから、そのときは断念することになったのです。しかし、やはり同じドコモグループとして行動するからには、目線を合わせるべきだよねということで、まずは若手社員から一緒にやっていきましょうと、合同研修の検討を進めることになりました。
3社の目線を合わせることで、今後グループ間で人材交流やプロジェクトの立上げが行われたときにも、スムーズな連携ができるメリットがあると思います。

栗澤氏

営業系では、ドコモとコミュニケーションズが一緒に行動する場面は既にあるので、合同研修を行うことで、今後さらに連携が取りやすくなるだろうと期待しています。

「『行動原則』」を具体に落とし込む

新入社員研修で大切にしたコンセプトがあったそうですね。

一刈氏

ドコモグループには「あなたと世界を変えていく。」というブランドビジョンを支える為の3つの行動原則があります。まずはブランドビジョンの認識と、行動原則の具体的な落とし込みを軸に、新入社員研修の設計を考えました。
行動原則とは「問い続けよう。」「踏み出そう。」「かけ合わせよう。」の3つです。言葉だけでは、抽象的で人によってとらえ方が異なってしまいます。ですので、研修では、自分たちで咀嚼して考えられる内容にすることを意識しました。
例えば、「問い続けよう。」は、お客さまがどういった悩みや課題をもっているかを問い続けること。次のステップ「踏み出そう。」は、お客さまから得た悩みや課題の解決に向けて行動に移していくこと。そして最後に「かけ合わせよう。」は、1人ではなく仲間の力をかけ合わせて課題を突破すること。そうしたことを具体的に考えられる研修を目指しました。

山口氏

ドコモの行動原則を浸透させていくためには、何度も丁寧に伝えていくことが大切だと考えていました。行動原則の内容をテキストでさらりと書いても伝わりづらいと考え、なぜその行動原則が必要なのか、ポイントはどこかを分かりやすく伝えることを大切にしておりました。

「新入社員1,231名のコントロールとケア」

3社合同で新入社員研修を行うにあたって、課題となったことや苦労したことはありましたか?

山口氏

先ほどの行動原則についてもそうですが、各社での「あたり前」はお互いにとってあたり前ではないという気づきと、各社での若手育成に関しての価値観のすり合わせを行うことがプロジェクト最初の壁となりました。私自身、コムウェアの若手育成という立場しか経験がないため、どこまですり合わせるべきか悩むこともありましたが、3社で目指すべき方向性が揃えられたことで、DCC若手育成チームが一丸となって進められたと思います。 研修の設計においては、グループ23社1,231名の社員にどう伝えたらべストなのか、講義とワークはどういったバランスが最も研修効果が高くなるのか、といった部分に苦労しました。コムウェア単体で行う研修と比較すると、受講者数が6倍の規模なので、当初は想像すら難しかったと記憶しています。

栗澤氏

私もやはりオペレーションの部分が不安でした。3月末の段階では机上でしかシミュレーションができないので、実際に1,231人を目の前にすると、思わず逃げ出したいような気持ちになりました。A地点からB地点に移動するだけでも、こちらがしっかりコントロールしないと混乱が起こるので、ライブ会場のスタッフのような気持ちで行っていましたね。
また、これだけの大人数の社員をどうフォローするかということにも、気を遣いました。大きい会場ではどうしても、前列に近い社員には届きやすく、後ろになればなるほど伝わりにくくなってしまいます。研修を受ける意欲はあるのに、伝わりにくい状況になってしまい、どうにか改善できなかったものかと、その点が今後に向けた改善機会になりました。

サポート側も成長を

新入社員のフォローとしてチューター制を採用されたそうですね。

栗澤氏

はい。1クラス35~40名のクラスに分け、各クラスには2名のチューターを配置しました。1,231名のフォローを事務局だけで行うのは不可能なので、チューターにクラスのフォローをお願いしました。研修中に思い悩んでいる新入社員に声をかけるなど、私たちでは対応できない部分までチューターが補ってくれたのは、とてもありがたいことでした。

一刈氏

チューター制度はもともとドコモの文化で、私が入社したときには制度としてあったので、14年以上になるでしょうか。私はチューター自身にも成長してほしいと思っていました。人を育成することの悲喜こもごもを、新入社員研修の期間を通して経験し、これからのキャリアに活かしてもらいたいですね。

山口氏

あるチューターは、自分も新入社員のときにチューターの先輩にお世話になったので、同じように後輩に接したいと話してくれました。そうして想いが引き継がれていくというのは、とてもいい文化だなと思います。

解像度が高いチェンジの提案

チェンジのビジネススキル研修をご採用いただいた理由をお聞かせください。

山口氏

コムウェアは15年ほど御社に研修を担当していただいており、新入社員研修だけでなく、他の若手向け研修もお願いしているので、必ずよい研修を提供頂けるという強い信頼感がありました。今回は2日という短期間でスキルをインプットするという難易度が高いなかでも、的確に必要な内容を取り入れて頂き、また講義とワークのバランスも非常に理想的でした。

栗澤氏

コンペでのプレゼンテーションの内容も完成度が高く、イメージしやすかったというのもありますね。一般的にはコンペの段階では詳細を詰めずに後ほど検討します、となる提案がほとんどだと思いますが、御社はコンペの時点でかなり詳細まで検討してくださっていました。テキストの案まで作成してくださっていて非常に驚いたのを覚えています。

一刈氏

二人が言うように、ご提案のコンペの時点で一番解像度が高かったなという印象です。また、研修の全体像がわかるように、ロードマップを作成してくださっていたのも好感が持てました。聞く・話す・書くという項目に従って、それぞれインプットとアウトプットが設定されているのがわかりやすかったです。Z世代といわれる新入社員たちに、この点が受け入れられやすいのではないかと期待できました。

コンテンツの質・マネジメント力の高さ

チェンジのビジネススキル研修で特によかったと思われる部分はどこでしょうか。

山口氏

カリキュラムの質がとてもよかったと思います。2日間の研修内容が綿密に設計されているだけでなく、例えば議事録の部分で生成AIを活用する内容があったり、カリキュラムの事後課題として自学習できるツールをご提供いただいたりと、魅力的な内容でした。ビジネススキルは、一度インプットして即座に実践できるものばかりではありません。なので、研修後にも自学習できるツールを提供頂けたことはとても助かりました。

一刈氏

コンテンツ内容についてはもちろんですが、全体統制という点でも御社は安心感がありました。講師の温度感や言葉一つをとっても、こちらの意図をしっかり反映してくださっていて、それが細部にまで浸透している。これほどまでに全体統制がとれている企業があるのかと、とても感心しました。1日600名という大規模の研修を、何事もなく終えられたのは、準備も含めて御社の連携の賜物だと思います。

栗澤氏

確かにとても統制がとれていましたよね。どこのクラスであっても、研修の質が統一されていたと思います。クラス数や受講者数が増えることで、講師の質によってバラつきが出てしまうことってよくあると思うのですが、御社の場合は、しっかりと基準があり、それに沿った形で各講師が講義していたという印象です。大人数をまとめなければならない立場からすると、とてもありがたいなと思いました。

キャリアの土台をともにつくりたい

今後の新入社員研修の取り組みについて教えてください。

一刈氏

私たちが若手育成期間で意識しているのは、受講した社員が育成期間後に自律的にキャリアを築いていけることです。当グループでも専門性を磨く必要性は説いていますが、専門性だけがあっても活躍できません。よくスマホのOSとアプリという例えをしています。いくら高性能のアプリがあっても、OSの性能が低ければアプリは動きません。それと同様に、高い専門性があっても、人間性が欠如していてはその専門性は活かせないのです。新入社員には、まずはOS部分を磨いてもらい、そのうえでステップアップしてほしいと願っています。
現代は、変化の流れが速いうえに、先行き不透明な時代です。そんな中でも、私たちは時流をしっかり掴みながら、若手が中堅社員になった後も目標に向かって邁進できる基礎を伝えていきたいと思います。

集合写真
▼インタビュアー
株式会社チェンジ 懸山 聡
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