OJTトレーナー制度やメンターメンティ制度はあるものの、運用は現場に任せきりという企業は少なくありません。今回ご紹介するANAエアポートサービス株式会社様も、同じ課題を抱く企業の一つでした。現場に憧れて入社した新入社員が1人でも多く最初の壁を乗り越えられるようにと、育成制度の刷新を決意した同社。その改革に伴走させていただいたのが、チェンジです。
インタビューでは、チェンジのOJT One(オージェーティーワン)をどう活用したのか、それによって何が変化したのかを詳しく伺いました。現場で実際に育成指導に取り組む方、制度設計に携わる方、それぞれの視点でお話しいただいています。
見上氏
当社は羽田空港の旅客サービス業務を行っております。国内線と国際線の搭乗手続き、搭乗ゲート、到着ロビーでのお客様のご案内が主な業務内容です。その中で私は、羽田空港の旅客サービス業務に関する訓練の企画運営に携わっております。
佐藤氏
私は、旅客業務の中でも、カウンター業務責任者としての対応や、ダイヤモンドサービスメンバー様専用カウンターのANA SUITE CHECK-INでのチェックイン業務などを行っております。
村上氏
私は今年入社の1年目です。主な業務は、航空券の発券や搭乗手続き・手荷物の受託を行うカウンター業務、搭乗ゲートでお客様を機内にご案内するゲート業務となっております。
吉田氏
当社には、スキルの育成を主とするトレーナー制度に加えて、スキル以外のサポートを行うメンターメンティ制度を設けていたのですが、そのメンターメンティ制度がうまく機能していない状況があったためです。当社では毎年約500名の新入社員が入社しますが、その一人ひとりのOJTがトレーナーやメンター任せになっていました。
その結果、育成する側もされる側も十分なフォローを受けられず、そんなとき、チェンジさんから紹介されたのがOJT Oneです。ツールでOJTの状況を可視化しつつ、対面でのコミュニケーションやフォローを促すことで効果的にサポートできるとのお話を聞き、導入を決めました。
佐藤氏
そうですね。育成を行う側も受ける側も、どう制度を活用するべきか戸惑うことがあったと思います。当社の育成制度では、業務上の育成・指導を行うトレーナーと、それ以外の生活面などを含めたフォローを行うメンターの、役割が異なる2人のサポーターが新入社員につきます。しかし、新人の頃は業務を覚えることに必死なので、どうしてもトレーナーとの時間が多くなり、メンターとのやり取りが少なくなってしまうのです。私が新人だった頃のことを思い返しても、メンターとのやり取りは少なかったなと思います。
吉田氏
実際、OJT Oneをトライアル運用したときには、トレーナーを軸に設計しました。しかし、運用してみると佐藤が言ったとおり、OJT Oneの運用と新人の育成とでトレーナーの負担が大き過ぎるという問題に直面したのです。そうしたこともあり、本格運用する際にはメンターに軸を変えて、新入社員を見守る環境づくりに重きを置いた運用にしました。
吉田氏
メンターメンティ制度自体はかなり前からあったと思います。新入社員に対するケアの必要性というのは、社内でもずっと感じられてきたことです。ただ、具体性がなかった。制度はあっても、実際にどういった支援を行うかというのは現場任せなところがあったと思います。ですので、今回OJT Oneを導入し、メンターメンティ制度の仕組み化の一歩を踏み出せたことは大きな意義がありました。
見上氏
OJT Oneの導入に加えて、フォローアップ面談を取り入れたこともメンターメンティ制度の実効性を高めることにつながりました。3カ月に1回メンターとメンティ(新入社員)が面談を定期的に行い、そのレポートをOJT Oneに入力することをルール化したことで、メンターの存在意義が高まったと思います。OJT Oneの導入は、メンターメンティ制度を見直すきっかけになりました。
村上氏
育成を受ける側としては、トレーナーは業務上で支えてくださる方という印象が強いです。今はOJTを終えて独り立ちしていますが、それでも不明点が出たときにはトレーナーを頼っています。一方、メンターの佐藤さんにはOJT Oneを通して、継続的に支えていただいているという認識です。トレーナーが点でサポートしてくださる存在であるのに対して、メンターは線で私を見ていてくださっているという感じでしょうか。OJT Oneを見ればこれまでの私の軌跡が目で見てわかるので、振り返りなどにも役立っています。
佐藤氏
メンターとしても、OJT Oneを使用するにあたってフォローアップ面談が新設され、メンティとコミュニケーションが取りやすくなりました。ちょうどつい昨日、フォローアップ面談を行ったところです。前回2人で設定した目標が達成できているかを話したり、困っていることがないかを聞けたりするので、以前よりもメンティのフォローができていると実感できます。
見上氏
この業界は一見華やかに見えるので、憧れをもって入社してくれるのですが、入社してすぐに現実とのギャップに悩む社員も少なくありません。そのギャップをカバーしてくれるメンターの存在は大きいと思います。
佐藤氏
周囲を巻き込みやすくなりました。例えば、メンターとメンティで話し合って決めた目標は、OJT Oneを通じてトレーナーやチームコーディネーター、グループコーディネーター、マネージャーに共有されます。今取り組んでいる目標、これまで達成できたことなどをみなさんに見ていただけるというのが、メンターの安心感にも繋がります。また、OJT Oneの内容をもってトレーナーとフォロー体制について話し合うこともでき、互いの役割分担を行いやすくなりました。
見上氏
OJT Oneによって、情報の共通フォーマットができたこともよかったことです。これまでもナレッジシートのようなものはありましたが、運用は各課に任されていたので、課によってレベルにばらつきがありました。それがOJT Oneによってフォーマットが一つになり、新入社員全員が均質なサポートが受けられるようになったのです。村上が言ったとおり、1年を通じて頑張ってきた成果を見返すことができると、モチベーションの向上にも繋がるでしょう。また、記録に残るということは、次世代にも引き継ぎやすくなるということです。これまで属人的に任されてきたことを体系化することで、会社の資産にもなります。メンティとして教わったことを、次はメンターとして活かすという伝承がより行いやすくなりました。
吉田氏
管理職側からも、これまで見えなかった新入社員育成が可視化できるOJT Oneは、非常に役立っています。私の課には6個のグループがあり、それぞれに約50人の部下を見る管理職を設置しています。各グループの管理職は、新入社員や他の社員を、グループを横断して把握しているものです。そこでOJT Oneのようなツールがあると、グループ外の社員一人ひとりの状況を把握しやすくなります。育成計画に紐づいた経過と実績が見えるのは、管理という面でも非常に有効です。
吉田氏
今後はOJT Oneで収集したデータを分析し、人財育成や離職防止・抑制に繋げたいと思っています。例えば、ログイン状況やコメントの多さ、退職した社員がどういったやり取りをしていたかなどです。まだ機能の周知や定期ログインを促す段階にあるので、まずは社内への理解をより深められるようにしたいと思っています。模範事例の横展開などにも力を入れていきたいですね。
見上氏
社内の理解という点に関しては、私もメンターメンティ制度の定着に注力したいと思っています。当社のメンターメンティ制度の歴史は古いものの、まだまだ発展途上です。本来は、OJT Oneというツールがなくても運用できるのがあるべき姿なのでしょう。しかし、まずはツールの力を借りてメンターメンティ制度を強靭なものにし、新入社員が安心して働ける職場風土を醸成していきたいと思います。