グローバルカンパニーネスレ日本が挑む次世代リーダー育成“Business Leadership Development Training”

世界185カ国でビジネスを展開しているグローバル企業のネスレ。その日本法人がネスレ日本です。スイスでの創業から47年後の1913年に日本支社が開設され、以来日本の食と健康を支えてきました。その伝統ある企業が今、次の時代のリーダー育成に力を注いでいます。

多くの企業がリーダー育成に頭を悩ます中、ネスレ日本はどのようにしてリーダー育成の一歩を踏み出したのか。今回チェンジは、その育成プログラム”Business Leadership Development Training”の企画・開発・運用のサポートをさせていただきました。

本プログラムは、単なるスキル研修ではなく、未来のリーダーがビジネスの現場で実際に挑戦し、結果を生み出せる力を育むことを目的としています。

本インタビューでは、プログラム開発を主導した人事総務本部 人材開発マネジメント部の皆さまに、研修の背景やこだわり、受講者の成長について詳しく伺いました。

次の一手を生み出せる人材育成

まずはネスレ日本の事業概要をお教えください。

木村氏

ネスレ日本(にっぽん)はスイスに本社をもつ企業の日本法人です。「Good food, Good life」というスローガンのもと、食品、飲料、栄養健康製品、さらにペットケア製品、アンバサダー事業なども展開しています。具体的には「ネスカフェ」、「キットカット」が食品飲料ブランドとしてあり、ペットフードでは「モンプチ」、栄養補助食品では「アイソカル」があります。また、スターバックス®の家庭用コーヒー製品の小売用、業務用製品の販売もネスレ日本が行っています。また、ネスプレッソやブルーボトルコーヒーもネスレグループの一員であり、幅広い製品やビジネスを通じて、ネスレグループは現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質向上を目指しています。

みなさまはどのような業務に携わっていらっしゃいますか?

内田氏

私は、人事総務本部の人材開発マネジメント部に所属しており、当部署は採用・研修・タレントマネジメントの3チームの構成になっています。具体的には、採用やトレーニングに加え、社員の業績管理やキャリアのサポートを含むタレント育成や後継者育成、またダイバーシティ&インクルージョンの促進等に関する業務を担っております。

木村氏

私は、トレーニングマネジャーを務めています。私たちのステークホルダーである各部門のニーズを探り、将来に向けて必要なトレーニングコンテンツを企画、運営するのが主な業務です。ネスレ日本のすべての部門(営業、マーケティング、生産本部、サプライチェーン、ファイナンスなど)が対象です。

後藤氏

同じく人事総務本部で、トレーニングスペシャリストとして研修を担当しています。今回の「Business Leadership Development Training」では、部門からノミネートされ、運営側としてではなく受講者として参加させていただきました。

今回は「次世代リーダーの育成」がテーマでしたが、このテーマに取り組んだ背景は何でしょうか?

内田氏

現在当社にはいくつかの階層別研修や海外研修はいくつかあるのですが、ビジネス環境がめまぐるしく変化していく中で、特に次の世代のリーダー育成に注力することにより、将来に起こる変化に対応し、競争力の向上を目指していきたいと考えていました。

将来ニーズを深堀りして新たな視点を持ってアイデアを幅広く洞察し、ビジネスの成長機会を探っていく過程で、社員がリーダーシップを発揮できる研修プログラムを創りたいと考えたからです。リーダー候補の研修にノミネートされることも、社員にとっては大きな成長機会やモチベーションに繋がると思います。プログラムの中身についてはまず各部門のHRBPが現場のマネジャーと話し合い、ネスレの資産を活用しながら新規プロジェクトを創出し、人を巻き込んで実行する力を高められるプログラムを作ろうと考えました。それはステークホルダーマネジメント、プロジェクトマネジメント、さらにはデジタル分野も一気通貫で学べるものです。そうして開発したのが、今回の「Business Leadership Development Training」です。最終成果は、私達のリーダーであるCEOにプレゼンテーションしフィードバックをもらいました。この研修名には「ビジネスリーダーシップを発揮して、自ら主体的に自己成長し続けて欲しい」という願いが込められています。

この取り組みはスイス本社からの要請というよりも、日本独自の動きということですか?

内田氏

はい、そうです。ネスレは185カ国でビジネスを展開していますが、人材育成は各マーケットが独自に行っています。例えば、新卒の文化があるのは日本だけなので日本特有の新入社員研修が必要になりますね。

ネスレには「ネスレリーダーシップフレームワーク」という世界中のネスレ社員のリーダーシップの成長をサポートするための重要な考え方があります。

積極的に現状打破に挑戦し変革をリードする、結果を出すために必要なリスクもとりながらオーナーシップを発揮する、多様な情報を統合して将来予測をして機敏に対応する、誠実なコミュニケーションで相互信頼の風土を築くなどです。これらはビジネス上、いずれもとても重要な行動になると思います。今回の研修を通して、グローバル全体のリーダーシップの指針を意識しながら、ビジネスを牽引するネスレパーソンとしてのリーダーシップを磨いてもらいたいという狙いがありました。

実務で活かせる研修が大前提

全体で約5カ月という長期に渡る研修で、だいぶ力をかけられた印象がありますが、プログラムを企画する上で注力したポイントは何でしたか?

木村氏

企画する上でこだわった点は3つあります。1つ目は「持ち帰り感」、2つ目は「育成とエンゲージメント」、3つ目は「対面で行うこと」です。1つ目の「持ち帰り感」では、研修した内容を実際に実務で活用してもらえるよう、アクションラーニングをコンセプトにしました。座学でインプットを行った後に、事例を用いてワークショップを行い、最後にアウトプットするといった形式です。ワークショップは3人1組のグループを形成して行いました。このグループワークは2つ目のこだわりに繋がります。メンバーを部署や世代を超えて組成することで、さまざまな人たちが議論し合い関係性を深め、結果的にエンゲージメントが上がると考えました。さらに対面で行うことで関係性が強固になることを狙ったのが、3つ目のこだわりの理由です。研修を企画した2023年当時は、まだ新型コロナウイルスの影響が残っており、対面での研修が避けられる傾向にありました。しかし、対面の重要性を私たちも感じており、部署や年齢を横断したネットワーキングの構築には対面が必要だと感じていました。

当事者意識を強めるための工夫

グループワークの人数を3名にしたことや、最終報告に進めるグループを選抜制にしたのもこだわりの一つですか?

内田氏

研修プログラムを創る過程でCEOにも相談に乗っていただいていたので、「どうせやるなら少人数チーム制にしよう」ということになりました。当初、グループワークは5~6名でチーム編成を行う予定でしたが、「より個々が責任感を持ってワークを実施するために少人数にしたほうがよいのでは。」という意見をCEOからもらい、納得しました。チームメンバーが多いほど、一人ひとりの意識が徐々に薄れてしまい、役割を持たない人が出てしまうかもしれません。結果としてチームメンバーを3人に設定し直しました。最終発表を選抜制にしたのもCEOのアイデアです。この研修に参加するメンバーは、各部門から選抜された将来のリーダー候補なので、会社からの期待を自覚して研修に挑んでもらうために競わせることも必要だという考えです。競うことで、よりアウトプットの内容が洗練されるのでは、という期待もありました。

難しいうえに成長に不可欠な他者との関わりを学んだ

後藤さんは受講生として、どのようにしてチームでコミュニケーションをとりましたか?

後藤氏

対面とオンラインのハイブリッド型で、研修序盤は週1回のペースで、話し合いがまとまってきた中盤からは2週に1回のペースでミーティングを行いました。私のチームメンバーは「キットカット」のマーケティング部の人と、工場所属の人でしたので、勤務する場所も仕事内容も異なります。そのため、ミーティングはほとんどオンラインで行いました。発表の前後はミーティングの時間を長く設定するなど、適宜調整しながら進めました。

研修の中で苦労したポイントについて教えてください。

後藤氏

チームビルディングの部分でしょうか。幸い、私はチームメイトを以前から知っていたので、チームビルディングはスムーズに進みました。しかし、他のチームでは苦労していたところもあったようです。初めて会う方とは、互いの仕事内容も得意領域もわからないので、そういった部分から探らなければなりません。その点でいうと、今回の3人編成は受講生側からしても非常によい人数設定だったと思います。話し合いがしやすいということもありますし、3者がそれぞれ役割を持てるからです。これが倍の人数だったとすると、きっと誰かがやってくれるだろうという思いが生まれ、次の打ち合わせまでに宿題をしないで臨む人も出てきていたかもしれません。

また、難しかった点は、発表に向けたアウトプットの部分です。経営幹部に向けて発表する内容を、どこまで深めるべきかがわからず、とても悩みました。しかし、講師からプレゼン方法を含めて細かいアドバイスをもらえたので、何とか乗り越えられました。

今回の研修で後藤さんご自身が成長したと思うことは何ですか?

後藤氏

周囲を巻き込んだり、チームメンバーの強みを活かしたりしてプロジェクトを推進する方法を身に付けられたことです。私たちのチームは、テーマをそれぞれの業務とは全く異なる分野で設定しました。そのため、わからない部分は詳しい方に聞くしかありませんでした。社内の関係者や、その道のプロに意見をもらいながら進めたことは非常に勉強になりました。また、メンバーはそれぞれ発想力、論理構築、コミュニケーションと得意領域が異なります。それらをうまく活用して役割分担ができたことも成長につながったと思います。

受講者に意識変化をもたらせたことが大きな成果

研修を実施してどういった成果が得られましたか?

木村氏

研修の様子を見ていて、部署や年齢を超えた人間関係が醸成できたという実感があります。アンケート結果にもそのようなコメントがありました。特に営業や工場勤務の人は所属組織内で仕事が完結することが多いので、今回の研修で社内にネットワークを作れたことは将来によい影響をもたらすと期待しています。さらに、最終発表時にCEOや役員から的確なフィードバックと声がけがあったことで、社員のモチベーションも上がったと思います。受講者からも「普段の業務から一歩離れて思考を巡らせることで、引き出しが増えた」という感想がありました。このように受講者の意識に変化を与えられたという点でも、成果があったと思います。

内田氏

私にとっての成果は、将来のリーダー候補者に3つのメッセージを伝えられたことです。1つ目は会社が将来のリーダー候補にとても期待しているということ、2つ目は他者から様々なことを吸収して視野を拡げることで自分自身と他者の相互成長に繋げられること、そして最後に、困ったり悩んだりしたときには仲間、頼れる人がいるということです。今回の参加者の様々なリーダーシップの集合体が、ネスレ日本の未来を創ってくれると実感しました。

個別のフィードバックでできた講師との信頼関係

チェンジの働きでよかったこと、改善が必要なことをお聞かせください。

後藤氏

受講者の立場として、講師が素晴らしかったと思います。講義や最終発表のファシリテーションも安心できましたし、個別フィードバックも信頼できるものでした。誰に対しても変わらないコミュニケーションと誠実な対応が、一人一人を尊重、敬意をもって接していただいていると感じました。

木村氏

企画運営側の視点から申し上げますと、1つのラーニングパスが作れたという点で、チェンジさんにお願いしてよかったと思います。もともとチェンジさんには入社2年目・3年目社員向け研修のサポートをいただいており、今回の研修が成功すれば、繋がりのあるパスが作れるのではないかと期待していました。実際、当社の社風や人材像を的確に捉えたコンテンツ作りをしていただけたと思います。また、今回はコンペ形式による事業者選定でしたが、チェンジさんからのご提案はその粒度が非常に細かかったことも印象に残っており、私たちとしても非常に研修内容のイメージがしやすかったです。そして何よりも、私たちの考え方がグループワークやケーススタディの内容などに盛り込まれていた点が、他社との一番の違いだったのかなと思います。

内田氏

もう「本当にありがとうございました」と、その一言に尽きます。受講者から「素敵な外部講師を連れてきてもらって、良かったです」と、言ってもらえました。絶妙なインプットとアウトプットのバランスで、研修を実施いただけたなと思います。

より「個」を重視した育成へ

最後に、今後チャレンジしていきたいことなどお教えください。

内田氏

そうですね、次はより「個」にフォーカスした社員の育成サポートにも注力したいと思っています。この研修で、将来のリーダー候補育成のためのレールを敷くことができました。ですので、今後はもっと各個人にもフォーカスして、その人が啓発・強化すべきことに取り組めるプログラムの開発も行っていきたいと思います。

木村氏

まさに内田が言ったように、企業戦略から人材戦略に落とし込んで、より「個」に集中していくことが必要になってきていると感じます。英語やデジタルスキルはもちろんの事、その他の領域でも、パーソナライズされ目的を明確にしたプログラムの開発が、今後一層求められるでしょう。目的や戦略と連動した戦術を、しっかり体系化させていきたいと思います。そこをチェンジさんにもお手伝いいただきたいです。

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